「プロジェクトマネージャをやってくれ」
プロジェクトマネージャの担当は突然としてやってくる。
あなたがエンジニアで、顧客からシステム開発を直接請け負う『一次請け』企業に勤めているのならば、避けては通れない道だろう。
先輩の後ろ姿を見ながら、プロジェクトマネージャの仕事を何となくは知っているかもしれない。
しかし、いざ自分が担当するとなると不安な気持ちでいっぱいだと思う。
そこで今回は、プロジェクトマネージャの仕事内容を簡単に説明する。
概要レベルの説明だが、最初の理解には役に立つはずだ。
目次
はじめに
システム開発のプロジェクトは、プロジェクト開始から終了までプロジェクトチームが結成されて進められる。
プロジェクトチームには、開発の規模に応じて複数のプログラマーやシステムエンジニアが所属するの一般的だ。
そして、プロジェクトメンバーをまとめ、プロジェクトを成功に導くのがプロジェクトマネージャの役割である。
関連記事:よく分かる!プロジェクトマネージャの役割を簡単に説明する
意外かもしれないが、日本のプロジェクトの半数は失敗しているというデータがある。
そのため、プロジェクトマネージャは非常に重要な役割を持つ。
しかしながら、プロジェクトマネジメントの勉強をしている人は少ない。
自分の経験や先輩からのアドバイスをもとに手探りで進めている人が多いのだ。
当然、そのようなやり方では、いつかプロジェクトは失敗する。
プロジェクトの失敗は、プロジェクトメンバーを激務に追い込み、あなたの評価を下げ、最悪の場合は会社の存続に関わる。
そうならないためにも、正しいプロジェクトマネジメントを学んでほしい。
プロジェクトマネジメントとは
PMBOK(ピンボック)という言葉を聞いたことはあるだろうか?
プロジェクトマネジメントの国際標準とされており、プロジェクトマネジメントの手法をまとめたものだ。
PMBOKでは、プロジェクトマネジメントを下記のように定義している。
プロジェクトの要求事項を満たすために、知識・スキル・ツール・技法をプロジェクト活動へ適用すること。
もっと簡単に言えば、品質・予算・納期の3つを守るために、知識や技術を用いるということだ。
当然、他人の知識や技術を使うことも可能である。
・プログラミングは手の早いBさんにやってもらう。
・困難な問題が発生したのでベテランのCさんにアドバイスをもらう。
極論を言えば、プロジェクトマネージャには業務知識もITスキルも必要ない。
知識や技術を持つ人の意見を取りまとめ、品質・予算・納期を守れるように決断をすればいいのだ。
プロジェクトマネージャの仕事内容
プロジェクトマネジャーの仕事は大きく、下記4つに分けられる。
②計画
③実行
④監視・コントロール
⑤終結
この5つはPMBOKでも定義されている世界標準のことなので、覚えておいて損はないだろう。
さて、それではそれぞれのプロセスを説明する。
①立上げ
プロジェクト開始前の仕事。
顧客にプロジェクトの目的や目標を確認のうえ、『プロジェクト憲章』を作成し、プロジェクトの承認を得る。
プロジェクト憲章という言葉は聞きなれないかもしれないが、提案書や企画書、プロジェクト定義書と呼ばれているものと同じ。
目的、目標、概算予算、スケジュールなどが記載される。
・売上の向上
・コストの削減
・老朽更新
顧客獲得ならば売上の向上、業務効率化はコストの削減、工場などの古い機器の交換は老朽更新だ。
②計画
顧客の目的達成に向けて、プロジェクトマネジメント計画を立てる。
プロジェクトの成功か失敗かは、計画で決まると言われるほどに計画は重要だ。
プロジェクトマネージャの仕事の中で最も重要な作業と言っても過言ではなく、スコープ・品質・予算・納期・リスク・・・など様々なポイントでの決めていくことがある。
下記のような事項の計画書を作成するのだが、ここではざっくりと説明しておこう。
スコープ管理
そのプロジェクトに何が含まれ、何が含まれないかを明確にする。
これをしっかりやっておかないと、「成果物に含まれていると思っていた」と顧客ともめて痛い目に合う。
スケジュール管理
成果物を作成するために必要なタスクを洗い出し、スケジュールを立てる。
WBSを作成する会社が多いだろう。
WBSは下記の記事でテンプレートを提供しているので参考にして欲しい。
コスト管理
スケジュールをもとに必要な人件費や機材、交通費などを算出する。
ちょうど顧客の予算内に収まればいいが、コストオーバーになる場合は、コストの削減方法を検討しなければならない。
場合によっては、顧客と開発機能の削減を交渉することになるだろう。
品質管理
顧客の要求する品質を満足するため、品質基準・品質保証方法を計画する。
具体的に言うと、レビューやテストの実施タイミング、不具合件数などを設定しておく。
事前に基準を設定しておくことで、プロジェクトが進んでレビューやテストで生じた不具合が、計画から大きく外れる場合に対策をとることができる。
資源管理
プロジェクト実行に必要な作業やスキルからプロジェクトメンバーを選定する。
メンバーの育成計画も検討内容の1つだ。
コミュニケーション管理
業務定例会議、自社内の定例会議、レビュー会議などの実施タイミングや参加者を決める。
会議だけでなく、報告方法(メール、報告書作成)についても決めておく。
リスク管理
想定されるリスクを洗い出し、対策を検討する。
とはいえ、リスクはある程度パターン化されているので、書籍を読むだけでもかなり参考になるはずだ。
ちなみに、優れたプロジェクトマネージャはリスク管理がものすごく上手い。
リスク対策をとっているので、問題が発生してもプロジェクトの影響が最小限に抑えられるのだ。
調達管理
プロジェクトに必要な、外部からの製品やサービスを洗い出し、契約の準備をする。
製品比較や見積り比較が必要な場合もあるので、意外と手間がかかる…
ステークホルダー管理
ステークホルダーとの良好な関係を築くための計画を立てる。
例えば、メールでの相談を好む人もいれば、対面での相談を好む人もいるため、それぞれの性格や関心事に応じて考えていく。
一見、重要でないように感じるかもしれないが、プロジェクトが難航したときに大きな効果を発揮してくれる。
③実行
プロジェクトの計画に沿って作業を進める。
メンバーや機器の手配、作業環境の整備、報告による状況確認などが中心だ。
システム開発を外注する場合や、外部から物品を購入する場合の契約手続きも行う。
なお、プロジェクトマネージャは成果物の作成を担当しない。
(WBSの担当者名にプロジェクトマネージャの名前は入らない)
プロジェクトの規模によっては、プロジェクトマネージャの担当者が、設計・製作・テストの一部を担当することもあるが、それはプロジェクトマネージャがシステムエンジニアやプログラマーを兼任しているだけだ。
④監視・コントロール
計画通りにプロジェクトが進むことはほとんど無い。
スコープ・スケジュール・コスト・品質などが計画から外れていないかをチェックし、外れている場合は、原因を調査して対策を打つ。
経験として多いのは、顧客からの機能変更(または機能追加)だ。
機能追加は、スコープ・スケジュール・コストに直結する問題であるため、顧客と合意のもとで納期や予算を変更することになる。
しかし、現実はそんなに簡単ではない。
書類に残っていなければ「言ったはず」と言われ、書類に残っていたとしても「そういう意味ではない」と言われる…
この結果、開発者側が責任を負うことになることも多い。
つまり、
・納期が変更されないため、プロジェクトメンバーの残業が必要となる
・予算が変更されないため、プロジェクトの利益が減る、もしくは赤字になる
このように監視・コントロールは最も重要な業務だと言えるだろう。
下記の記事では、課題管理表のテンプレートを提供しているので参考にして欲しい。
⑤終結
プロジェクトの作業が完了したことを確認し、関係者の承認のもとで正式にプロジェクトを終結させる。
主に作業は下記の通り。
・成果物の納品
・教訓の文書化
構築したシステムも納品物の1つだが、各種設計書やテスト結果も納品物の1つだ。(運用保守に使われるため)
※正確に言うと、顧客との契約書に納品物は記載されている。
さいごに
ここまでプロジェクトマネージャの仕事をざっくりと説明してきた。
何となくイメージできただろうか?
冒頭でプロジェクトの半数は失敗していると書いた。
また、本番化後に大規模な障害を発生させ、社会に影響を与えるような事例も絶えない。
このような背景より、プロジェクトマネージャができる人材の評価は非常に高くなっている。
プロジェクトマネージャの知識は書籍でも学ぶことはできるが、やはり実践で得たノウハウに勝るものはないだろう。
今後、プロジェクトマネージャを担当することになった場合は、この記事に書かれてあるような仕事ができているか確認してほしい。
そうすれば、プロジェクトマネージャとしての成長を加速させることができるはずだ。
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